- ストレートプレイとミュージカルの違いは何?
- ストレートプレイって、具体的にはどんな作品なの?
- ミュージカルとストレートプレイ、会場の規模が違うことが多いのはなぜ?
普段ミュージカルを見ている人なら、一度は目にするであろう言葉「ストレートプレイ」。
「本作品はストレートプレイです」と書かれていたら、「ストレートプレイって何?」となりませんか?
この記事では、ストレートプレイとミュージカルの違いについて、日本で最も有名なミュージカル劇団の劇団四季を例に出して解説します。
二つの意味を比べるだけでなく、実際の舞台を想像しながら読み進めてくださいね。
Contents
ストレートプレイとミュージカル 違いを分けるのは「音楽」
- ミュージカル
音楽(歌)・セリフ・ダンスを融合した総合エンターテインメント - ストレートプレイ
セリフ劇・正劇
ミュージカルは歌・セリフ・ダンスの3拍子がキーワード。セリフだけで直接的に観客へ伝えるのではなく、歌やダンスなど感覚的なものも通して表現します。
対して、ストレートプレイは一般的な劇(正劇や一般劇とも表現されます)のこと。セリフや演技による俳優の掛け合いで、ストーリーが展開します。
ストレートプレイをなじみのある表現で置き換えるなら、「お芝居」や「演劇」といったところでしょうか。
一般的にストレートプレイという表現を使う時は、ミュージカルと明確に区分したいという主催者の意図がある場合が多いようです。
劇団四季や舞台には音楽や歌が多めのストレートプレイもある
ストレートプレイの中には「俳優さんが歌っている」作品や「作品の比重に音楽が多め」な作品もあります。
「思い出を売る男」
ざっくりストーリー:サックスを奏でながら、登場人物が過去の思い出に浸る
劇中に流れるサックスの音が優しくて懐かしく、まるでミュージカルを見ているのと似たような気持ちになる作品です。
実際、思い出を売る男に出演する俳優さんは、演技はもちろん歌える人が選抜されることが多いのも特徴の1つ。
しかし、劇団四季公式からはストレートプレイとして紹介されています。
劇団四季の場合、ストレートプレイとは「ミュージカルに分類されない作品」というニュアンスのほうが強いのかなと感じます。
ミュージカルのほうが凄いという誤解も?ストレートプレイの魅力
私の友人に、このような意見を持っている人がいました。
確かに、劇団四季で上演されるストレートプレイ作品も、ほとんどが自由劇場(劇団四季専用劇場の中で最も小規模な劇場)での上演。会場の規模だけで考えると確かに小さいです。
この意見は誤解です。なぜストレートプレイが比較的規模が小さいことが多いのかを解説します。
ストレートプレイの会場規模が小さい=格下なのではない
- ミュージカルはダンスが必須で動き回るスペースが必要
- ステージが小さいとセットを華美にしなくてもきれいに見える
- ミュージカルは、宣伝を大々的に打たなければ集客できず、知名度が上がる
ミュージカルはセリフだけでなくダンスが必須。舞台が広くなければダンスができないため、必然的に会場も大きくなります。
ストレートプレイの場合、会場が広くなくても上演可能なことが多いため、小規模の劇場で上演されることが多いのです。
加えて、舞台・会場が広いミュージカルの場合、セットを華美にしなければ舞台が空に見えてしまいます。宣伝も多くしなければ、お客さんが入りませんよね。
よって、ミュージカルの舞台規模が大きくなるのは仕方のないこと。反対にストレートプレイは、会場に合わせることができる柔軟性を持っています。
距離の近さや舞台との一期一会感 ストレートプレイならではの魅力
そもそも、ストレートプレイをミュージカルと一括りにして比べるのはナンセンス。
管理人の私は、ミュージカルよりもストレートプレイのほうが演技がしっかり見られるため、終演後のお腹いっぱい感が大きいです。
会場が比較的小さいので、ミュージカルよりも役者さんとの距離が近いところもうれしいですね。
ストレートプレイの中には、再演されない完全オリジナル作品も多くあります。舞台との一期一会感が高まり、特別な時間を過ごせたなと感じます。
劇団四季のストレートプレイ作品 なぜミュージカル以外も上演するか
劇団四季=ミュージカルのイメージが強いと思いますが、多数のストレートプレイ作品を生み出しています。
劇団四季で上演されたストレートプレイ作品のうち、一部を紹介します。
- 恋におちたシェイクスピア
- オンディーヌ
- ひかりごけ
- 鹿鳴館
- エクウス
- アルデールまたは聖女(劇団四季最初の上演作品)
並べてみると、劇団四季のストレートプレイ作品は少し前に上演された作品が多い気がしませんか?
ストレートプレイ新作として話題になった「恋におちたシェイクスピア」は、2006年の鹿鳴館から数えて12年ぶりの制作でした。
劇団四季の原点はストレートプレイ!ミュージカルが後発
本日、浅利慶太の一周忌の会が自由劇場にて執り行われました。浅利の目指した演劇の下に集まった者たちが一堂に会し、黙祷、台詞、歌を捧げました。その後『李香蘭』カンパニーは、いつも通り稽古に励み、皆で献杯。浅利演出事務所は浅利の遺志を受け継ぎこれからも「人生の感動」をお届け致します。 pic.twitter.com/mJMVyQSeB8
— 浅利演出事務所 (@asariproduce) July 13, 2019
そもそも劇団四季は、東京大学と慶応義塾大学の学生10人で結成した、学生演劇が始まりです。
当時はミュージカルを扱っておらず、演劇そのものの面白さを追求するためにストレートプレイ専門劇団として活動していました。
劇作家ジャン・ジロドゥ(オンディーヌなど)やジャン・アヌイ(アンチゴーヌ、ひばりなど)など、主にフランスの戯曲を上演しています。
1960年に「有限会社劇団四季」が設立されました。
キャッツが当たりロングラン化できるミュージカル劇団色が強まる
劇団四季上演作品にとっての転機は「キャッツ」でしょう。
当時、劇場の契約は1か月ごとに行われることが多かった日本では、本格的なロングラン上演が行われていませんでした。よって収益化があまりできていなかったといわれています。
五反田にロングラン上演できる「キャッツシアター」を建設し上演したところ、大ヒット。後に専用劇場を建設し、ロングラン公演が期待できるミュージカルを多く扱うようになりました。
しかし劇団四季の根源はストレートプレイです。劇団四季がミュージカル専門の劇団でないことは、このような背景があります。
ストレートプレイは一般演劇のこと 劇団四季で上演されることも
- ミュージカル
音楽(歌)・セリフ・ダンスを融合した総合エンターテインメント - ストレートプレイ
セリフ劇・正劇
劇団四季では、ストレートプレイ作品が年中上演されているわけではありません。劇団四季のストレートプレイが見たい場合は、公演案内を確認しましょう。
劇団四季オリジナルのストレートプレイは、DVD化されているものも多いので、興味がある人は下記リンクから確認してみてください。
なお、ストレートプレイを行うのは劇団四季だけではありません。普段ミュージカル慣れしている人だからこそ、演技だけで表現することの深さに触れられるでしょう。
ぜひ劇場に足を運んでみてください。